『日本書紀』のような歴史書には、日常生活で当たり前のことは記されていないことが多いものです。文献だけでは分からないことを研究するためには、出土した遺物や生活の痕跡を調べる考古学的手法などの力を借りることが必要です。この章では、日常生活に欠かせないトイレのお作法を題材に、小学生の創造力を喚起してみたいと思います。
のぶた先生:
「今から、ちょっと汚いお話を考えてもらいます。ちょっと臭いお話です。みなさんは、タイムマシンで鎌倉時代に時間移動しました。どうやって?……知らん! すると、トイレに行きたくなりました。さっき落としたチョコレートを、ママに内緒で拾って食べたのが悪かったのかもしれません。
鎌倉時代のトイレに駆け込みましたが、今と違って、トイレットペーパーがありません。もちろんウォシュレットもありません。昔は高価な紙でお尻を拭くことなんて、できなかったんです。それは紙が高いからです(進次郎構文)。画面を見てください。鎌倉時代のトイレは、こんな感じです。幕府の敷地や、執権・北条泰時の家にあったトイレなので、地位が高い人たちが使うトイレです。ここでは、この絵のように、うんちっちをすることになります。
一つ目のトイレは、地面に穴を掘って、穴の上に2枚の板を置きます。その上でしゃがんで、真ん中にある穴からうんちっちを下に落とします。……危ないね、これ。ズレたり割れたり、泥で足がすべったりして、すぐ自分も落ちるよね。
次に、こんなトイレもあったそうです。水がチョロチョロと流れている溝の上にまたがります。おおっ! あんぜ~ん。手に「せき板」という板を持って、これで溝を流れている水をせき止めます。「水をせき止める板」という意味で、「せき板」というんですね。すると前のほうに水がたまるではありませんか! そして、うんちっちをした後、この板を上に『おりゃっ』と上げると、せき止められていた水が前から後ろに流れだして、うんちっちは道の端の溝まで流されていくという仕組みなんです。よくできていますね。
とは言え、ぽっとし落としたうんちっちの行く末なんかには、今は興味ありません。みんなに考えてほしいのは、“おしりどうする問題”です。うんちっちをした後は、おしりをキレイにしたいですよね。でもウォシュレットもトイレットペーパーもありません。さて、みんな、どうやっておしりをきれいにしましょうか。」
Aさん
「うーん、簡単に言うと、水で流す。で、水はきれいだから。使わなければ綺麗だから。あのう。ええ一回使ったら流さず、二回目になるので。二回目の時に流す。」
のぶた先生
「ああ、なるほどね。こちらもあの流しのところのね。おしりを洗って一回目は長さず、二回目で流すといった細かい使いかたまで工夫してくれました。」
Bさん
「一番目のみたいなやつで。水を貯めといて……非現実的なんでやめときます。」
Cさん
「排水の水のところからポツンとやると。もっときたなくなるんですけど、まず排水の出口とかでおしりを拭くんじゃなくて。もういっこの川というものをを作って、でそこで洗う。」
のぶた先生
「あのうんちっちが落ちてくこの右のトイレの溝は別に、もう一つ溝を作って、そっちを洗い用の溝としていると言うふうに考えました。はい。では、皆さん結構水をふんだんに使ってくれました。」
Dさん
「なん扇子みたいなのつけて、それを川にぶちこんで、うんちっちとかおしっこが流れないようにして、そこでにおしりをつける。」
Eさん
「ええと。大きいなんか緑の葉っぱを持ってきてで。その葉っぱでおしりを拭くとか。」
Dさん
「冷えそう。」
Eさん
「せき板でせき止めている水を何かでを汲んで、それで拭けばいいんじゃないかなあ……っていう。」
Fさん
「鎌倉時代ってさあ、そういう普通の人とかもさ布とか持ってる。」
のぶた先生
「布はまあまあ持ってるね。」
Fさん
「だから布をまず水に濡らして。それで拭く。」
のぶた先生
「そして拭いたあとの布はどうする?」
Fさん
「ついたのは?ううんとゴミ箱に捨てる。」
のぶた先生
「なんか昔は布も高いんだよな。紙より高いかもね、布。」
Fさん
「だったら紙で!」
のぶた先生
「その紙も布も高くて、多分普通の農民だったら捨てられない。」
Gさん
「だったら、布を買って、それを何回もリサイクルすればいいんじゃないの?洗ってつけて、洗ってつけて、洗ってつけて。」
Hさん
「えっと、まず棒をいっぱい集めて、先になんか柔らかいものをつけて、やるごとにどんどん削ってけばそれで取れると思う。」
のぶた先生
「どんな柔らかいものがあるかな?そこがね、なんだろうな。棒に着けるような葉っぱとかどうなんだろうね。」
Fさん
「まずうん、トイレした後なんか人がはいれるぐらいのなんか池みたいなの作って。ここに何分間か座っとく。」
のぶた先生
「ああ、なるほどね。池の中に入る。でも次に入る人嫌じゃない?前の人が入ったその池に入るの?」
Fさん
「その人専用の池をつくる!」
Iさん
「鎌倉幕府の武士のところに行って、刀を借りて、刀で拭きます!」
のぶた先生
「え!? 痛いよね。のぶた先生は出張先のホテルではカミソリで髭をそっているけど、刃物をオシリにあてたら血みどろになりそうだよ。デコボコがある部分に刃物をあてるのはキケンじゃないか?? あと、オシリを汚したまま武士のところまで行くの!? 武士のほうも『ケツ拭くから刀貸して』とか言われたらキレるんじゃないか?」
Iさん
「じゃあ、槍!!」
のぶた先生
「解決してない! 解決してないよ。むしろ、槍のほうが長いぶん持ちにくいよ、きっと。……試したことないけど。 ちょうど地震が起きたりしたら、スゴイ刺さりかたするよ、きっと。見たことないけど。」
Iさん
「じゃあ、弓!!! 弓の紐のところで拭けばいい!!!!」
のぶた先生
「なんで!? なんで、Iさんは、かたくなに武器でオシリを拭きたがるの?? 人を傷つけるためのデザインした武器とオシリは、たぶん一番相性悪いんじゃないか。」
Jさん
「天井をなくして、雨でオシリを洗う!」
のぶた先生
「雨! 天気が良い日はどうするの??」
Jさん
「天気が良い日は、せき板のトイレでうんちっちをして、溝の水で洗う。雨の日だけ、穴のトイレに行って、うんちっちをしたあとは雨で洗う!」
のぶた先生
「いや、雨って上から降ってくるやん。オシリって下向きについてるやん。雨って、オシリに当たらなくね?じゃあ、雨がオシリに直接当たるポーズをしてみてよ。」
画面の向こう側で、男子数人がケツを天井に向け始める。
Kさん
「じゃあ、でんぐりがえりの途中のポーズで、雨をオシリに直接当てたら。」
のぶた先生
「でんっ……!今、すごい絵面を想像したよ。アフターうんちっちに、トイレででんぐりがえりだね! あ、そのポーズだと、オシリを洗って汚れた雨が、体を伝って顔にかかるんじゃないか?」
Lさん
「カンナなどで薄く削った木を使って、その木をトイレットペーパーの代わりにする。」
Mさん
「木だと痛いから葉っぱで拭く。」
Nさん
「ふんどしで拭く。」
Oさん
「右左の場合に、2つ個考えてみた。まず左は。池に飛び込む。拭いて、それからお花とかの花びらでカバーして乾くまで待つ♡右の場合はねえ、まず川に濡れたものをつけて、それで終わり。」
Pさん
「ハンカチで拭く♡」
のぶた先生
「やっと上品な感じになった。」
Qさん
「タイムマシンに戻って。トイレットペーパーを鎌倉時代に持って行く」
のぶた先生
「なるほど。おトイレに行くたびにタイムマシンに乗ってたらなんかさ。今トイレに行くたびにタクシーに乗るような感じで大変そうな気がするけど大丈夫かい。」
Rさん
「ひもで拭く。」
のぶた先生
「その紐は、洗ってもう一回使うの?一回使ったら捨てるの?」
Rさん「洗って使う。」
Sさん
「土!」
Tさん
「枝でキレイにする。」
のぶた先生
「では、昔の人がどうやっておしりを拭いていたのかを見てみましょう。画面を見てください。
これは、籌木といいます。読み方は「ちゅうぼく」でも「ちゅうぎ」でもどちらでもいいです。もっと露骨に、「糞篦(くそべら)」っていう呼び方もあります。ちょっと薄めの割り箸みたいな感じですね。たとえばこっち側を手で持って、反対側でお尻をちょいちょいとして、付いてるものを取っていくんですね。博物館とかで見ることができますよ。みんなもね、籌木でお尻が拭けるのかなと思ったら、割り箸とかで試してみると、昔の人の気持ちが分かるかもしれません。でも割り箸はトイレには流れないので、絶対トイレに流しちゃダメですよ。そのかわり、その割り箸でご飯を食べてください。」
みんな「しません! ぜったい。」
ความคิดเห็น