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執筆者の写真順大 古川

バイデンだったね〜【青木裕司と中島浩二の世界史ch:7】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:「バイデンだったね〜

中島:

歴史を紐解けば世界が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。先生、このチャンネルが始まってアメリカ大統領選挙のずっと結果がわからない中でアメリカの歴史というのを紐解いてきました。


青木:

冷や冷やしながらね。


中島:

冷や冷やしながら。つまり他国の大統領だけれども我々にも必ずやっぱり影響がある。というか世界中に影響があるということで、それで今11月の中旬ですけれども、トランプさんは白旗を上げておりませんが、まあアメリカのメディアなんかも、「will be」、つまり次期大統領ということでもうバイデンさんのことを紹介し始めているということですよね。



青木:

そうですね。外国の首脳も、日本の菅総理も含めてバイデンさんのほうにおめでとうございますと。


中島:

祝意を伝えたというね。


青木:

もう流れはできましたよ。


中島:

ですよね。法廷闘争に持ち込むというふうには言っているんですけれども、バイデンさんが票数としては、代表の選挙人という人たちの票数は300以上取ったんですよね。


青木:

そうです。306対、トランプが232なので。


中島:

だからバイデンさんがきちんと勝ったと。


青木:

安定過半数ですね。


中島:

ただ票数を見てみたらバイデンさんが7855万飛んで426票。トランプさんが7300万飛んで2万4109票ということで、50.9%対47.3%ですから。


青木:

これはもう全然ですね。だってどのリサーチ会社も、それなりの世論調査があるものでして、10ポイント以上差が開いていたんですよ。ところが蓋を開いてみたらたったこれだけの差。


中島:

ひとつ話が横道に逸れますけど、世論調査も前回のヒラリーさんのときなんかはヒラリーさんが勝つという世論調査が圧倒的だったわけでしょ、でも蓋を開けてみたらトランプさんが勝ったみたいなことになっているので、この世論調査というのが、もちろん統計学に基づいて世論調査ってやっているんですけれども、見えなくなりつつありますね。


青木:

はい。実際4年前の世論調査に関して言うと、いわゆるトランプさんを支持したといわれる非大卒の白人たちの声を十分にすくい上げていなかった。だいたい高学歴の人ほど「私は何々を支持する」と意思表示をはっきりするんですよ。それに対して大卒じゃない人たちというのはあんまり自分の声というのを表明したがらない。そういう傾向があって、それを十分に拾いきっていなかった反省を世論調査会社がやっていたみたいですね。今回はその部分について修正したはずなのに、外れはしなかったけど、だけどこんな僅差とは誰も予想してなかったですよね。


中島:

しかも投票率がこれだけ高かった。


青木:

はい。67%前後と言われているので有権者の3分の2以上ですね。これははっきり言ってこの100年間アメリカの大統領選挙で一番高いという率。


中島:

圧倒的な投票率だったということは、やっぱりそれだけ自分の声を反映してもらおうという人たちが多かったってことですよね。


青木:

今回の大統領選挙でいくつか思うことがあったけど、一番に思ったのは投票率が高いというね、ある意味アメリカ民主主義の底力というか。やっぱり議論になっている問題があれば、それについてみんなが意思表示をして、自分


の意図を、意志を表明すると、選挙という方法においてね。投票人1億5000万人ですよ。


中島:

すごいですね。


青木:

すごいなと思ったですね。


中島:

本当にすごいなというふうに思いましたし、じゃあ今回バイデンさんが次期大統領ということで、もう覆せないだろうと、今、白旗はまだ挙げてらっしゃらなくて、トランプさんは法廷闘争に持ち込むということにはなっているんですが、バイデンさんがもう勝利宣言をして、いろいろ言っていることは、今までのトランプさんがやってこなかったことををひとつひとつやると言ってますよね。


青木:

ポイントになったのはバイデンさんのほうがいわゆるパリ協定に復帰したりして環境保護をガンガンやりますと。あるいは人種問題についてもちゃんと向き合いますと。それから、アメリカファーストじゃなくて、従来の同盟国と協調しながらいろんなことをやっていくと。


中島:

だから僕、すごく印象的な言葉がカムバック。アメリカが国際協調社会に戻ってきたよということをすぐ表明しましたよね。


青木:

そうですね。だから従来のアメリカの姿ですね。それに戻したいと。それに対してトランプさんというのが経済と雇用、これを前面に押し出して選挙戦を戦ったわけですよ。はっきり言ってコロナの問題は起こらなかったら、コロナによって経済がこんなふうにならなかったらトランプさんが勝ってましたね


中島:

現職が強いというのと、実は意外とアメリカの国内の経済を立て直しているというところ、あれって思うんですけど、トランプさんなんて全然政治家のあれがなかったわけじゃないですか、その経験が。それにも関わらず、まわりを固めていたスタッフが良かったってことですか?


青木:

どうなんですかね、そのへんは僕もまだあんまり十分分析してないんだけれども、だけど保護主義に立って国内の産業を守ると。特に中国からいろんなものを輸入したりしてる、それをストップさせて、そのぶん国内の産業を復活させると。それが本当にアメリカ国民全体の経済を良くしたかどうかは僕はわからないところがあるんですよ。だけども少なくとも4年前より暮らし向きが良くなっていると思っている人が全体の53%いたと。これはすごいですよ。


中島:

すごいですよね。


青木:

だいたい大統領1期目が終わったときに、これは前のオバマさんもそうだし、その前のブッシュさんもそうだけども、2期目になろうとするときに4年前に比べてどうですかといったときに、オバマさんもブッシュさんも43%から46%の人しか良くなったとは言ってないんです。


中島:

半分以下なんですね。


青木:

半数以上の人に良くなったと思わせたトランプさんの手腕というか、実際そういうふうに感じている人がいるというのはすごいなと思うんですよ。


中島:

他の国は振り回されたけれども、アメリカ国内でいうと満足したという人が半分を超えたというのはかなりすごいことですね。


青木:

特にアメリカは豊かな国じゃないですか。もともと豊かだった人じゃなくて、いわゆるラストベルト、錆びついた工業地帯の人たち、あるいは農村地帯の人たち、特に白人なんですけども、だんだんアメリカの中心から自分たちはずれてきていると、中心ではなくなってきていると。

我々がこれまでアメリカを支えてきた。でもその我々のことを忘れている政治家が多すぎたんじゃない?というところにトランプさんが出てきて、あいつだったら俺の声を、俺たちの声を反映してくれるんじゃないかと。それが今回の7300万票という票に表れたと思うんですよね。


中島:

だから本当に民主主義ですよね。我々の声を代弁して、我々にとって一番豊かになることってどうなのかということを政治でやってくれるという。


青木:

そうです。ペンシルバニアで取材した人たちが、日本人のジャーナリストが言っていたんですけども、ペンシルバニアでトランプさんに投票した人たちも、「人種問題に関するトランプの発言はおかしいよ、それはわかってるよ。だけど彼は雇用機会を増やしてくれたそちらのほうに自分たちは流れていくよ」ということなんですよね。


中島:

投票というのは難しいところなんですけれども、100%という人はなかなかやっぱりいないですよね。自分の考えとまったく同じだという人はいない。じゃあなにを言っていることの中で優先注意をつけて、この人だったら自分の思うことの60%やってくれる、70%やってくれるなということでの投票になるわけですね。


青木:

そうですね。そのへんで言うとトランプさんに7300万人も入れたと、あんなひどい差別的なことをチラチラ言っちゃう7300万人ものアメリカの人が入れちゃったのでアメリカはひどい国だなとは僕は思ってないんです。自分の期待、自分の要求というか、それに応えてくれるというのが政治家の仕事なので。少なくともトランプさんはそう見えていたわけですよ。


中島:

そしたらバイデンさんが7800万票を取ったということですけど、バイデンさんはなにをしてくれるというふうに思った人たちが入れたんですかね。


青木:

具体的な政策というよりは反トランプなんですよ。トランプでない人になってほしいと。これは前から言われていることだけども、今回バイデンさんに入れた人たちはどういう人たちかというと黒人ですね。それからヒスパニックの人のだいたい3分の2ぐらい。それから若者。若者は30歳以下は3分の2ぐらいバイデンさんに入れてるらしいですね。白人の中でもどちらかというと女性はそんなに差はないけどもバイデンさんに入れた人たちのほうが多かったと。


中島:

実は前回、白人の女性の人たち、いわゆる中流のサッカーママと言われる人たちはトランプさんに。浮動票という、一番の浮動票というふうに言われる人たちがトランプさんに入れて、今回はそれがバイデンさんに投票した。じゃあそういう人たちはトランプさんの政策じゃないなというふうに思ったということですね。


青木:

そうですね。やはり都市の郊外に住んでいるまあまあの生活をしている人たちって教育水準が高いんですよね。アメリカってやっぱり民主主義の国だろ?人種差別に反対してきた、奴隷制に反対してきた国だろ?なのに白人至上主義を煽るような、支持するような、そういう発言をするトランプさんはいかがなものかと、そういう判断が働いたと思うんですよね。それがママたちをバイデンさんのほうに持っていったという感じですよね。


中島:

でも本当にこの2020年ぐらいになってもいまだ根強くずっとあるというのが差別の意識ということですよね。


青木:

そうですよね、なかなかなくならないですよね。特に都市の中のセンターの部分に黒人の貧困層がわりとたくさん住んでいる。郊外のほうに白人たちが住んでいて、そういう棲み分けがどんどん行われている。レーガンの時代からそれは進んでいるんですけどね。よくアメリカのことを人種のるつぼというけども、混ざり合ってはいないんですよ、サラダボールそれぞれ自分のアイデンティティを主張しながらバラバラに存在していると。


中島:

僕ひとつ思うんですけど、これって本当に難しい問題で、なにか不満があったときに、なにか別のものに原因を見つけるというか、そういうところってあるのかなって思うんですよね。


青木:

昔から野心を持った政治家がとってきた手法のひとつですよ。今おっしゃったように、たとえばトランプさんに言わせると、なんでアメリカの経済が良くないか、それは中国が悪いんだ。あるいはなんでアメリカの国家財政が厳しいのか、それは同盟国が十分に防衛義務を負担していないからだと。他人に必ず責任を。


中島:

ヒールを向こうに向けるんですよね。普通の生活の中でもなんか調子が悪い、うちの家計だけど、これなんでだといったら、調子の良い商売している違う人種の人たちがやっぱあれなのかなというふうに思っちゃう部分ってあるのかなって思って。


青木:

それが一番楽なんですよ、自分で責任を取らないというかね。そこらへんの意識をトランプさんはうまく組織したなという感じがしますよね。


中島:

でもとにかくバイデンさんがなって、バイデンさんがこれから4年間やっていくということですけど、年齢的にはかなりですよね


青木:

就任式のときは78歳ですからね、アメリカの歴史上最高齢の大統領


中島:

あの激務をあの年齢で大丈夫かというふうに不安視する人たちもいらっしゃいますよね。


青木:

2期目までは考えていないみたいです。副大統領のカマラハリスさんが実質的には次の大統領候補になるのかなという感じですよね。ハリスさんがこのあと4年間修行をすると、そんな感じになると思います。



中島:

4年間修業をするということですけれども、実際アメリカ大統領選挙でも、実はそれぞれの党の代表に選ばれたあとに1年間かけて実はずっといろんな州を回りながら、いろんな声を聞きながら自分の政策を立案していくみたいなところでの大統領選挙って1年かけて実は行われるものなんですよね。


青木:

半分はお祭りなんですけどね。


中島:

それこそすごいらしいですね。みんな普通の人たちが自分の支持している人に対して、「私こう思っているけど」って隣近所に言って回るという、それが大統領選挙ですよね。


青木:

基本そうです。戸別訪問をガンガンやる。


中島:

そうなんですよ。でも今回は新型コロナウイルスでなかなか戸別訪問ができなかったらしいですよね。でもバイデンさんが勝って、あと選挙人という人たちが投票するじゃないですか。あれ選挙人って、たまに謀反を起こす人がいるらしいですね。


青木:

滅多にいないですよ。不誠実な選挙人というやつで、はっきりとした謀反を起こした人って9人ぐらいで。って言われてますけどね。


中島:

前回のトランプさんのときはいたんですよね。


青木:

そうそう。州に最高裁判所ってあるんですけれども、そこが「それはダメだよ」という判決をこの前出したんです。


中島:

じゃあそういうふうに、うちの選挙人はこうやって。選挙人という制度もまったくわからないんですけど、アメリカの政治システムというのが。

先生、次回アメリカの政治システムのことについてちょっとやりましょうか。そうじゃないとなかなか厳しいと思います。

皆さん大人の世界チャンネル、大統領選挙のことについて、世界史からちょっと離れましたけれども、大統領選挙のことについてはみんな聞きたかったし、話したかったしみたいなところがあるでしょうから。


青木:

私たちもね。

中島:

次回はアメリカの政治システムのことについて勉強します。








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