top of page
執筆者の写真順大 古川

中国近現代史7【天安門事件のあと香港返還】【青木裕司と中島浩二の世界史ch:19】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木裕司先生です。よろしくお願いします。

前回、天安門事件まできちんとやりましたけれども、そのあとというところですね。


青木:

いよいよ大経済発展の時代ですね。天安門事件で多くの市民を虐殺したというので、アメリカ、西ヨーロッパ、日本からちょっとした経済制裁を受けるわけです。中国の経済、ちょっと下げ気味になるんですね。なおかつ1991年に鄧小平をビビらせる事態が起こる。それはなにかというとソビエト連邦の崩壊。同時にソビエト連邦を支配していたソ連共産党があっけなく解散していくわけですね。これを見た鄧小平はビビるわけです。


中島:

自分のところの国のシステムがちゃんと今後できるかどうかということですよね。


青木:

ソ連共産党があっけなく解散させられた一番大きな原因というのは、いろいろあるんだけども、一番大きな原因というのはソ連国民の豊かになりたいという期待に共産党が応えられなかった。それを中国でやれなかったら俺たちも危ないというふうな危機感を持つんです。

ソ連崩壊の翌年の92年に鄧小平はもう90歳を超えてますけども、中国の南部のほうを視察して資本主義化の道をもっと加速すべきだ、そういう檄を飛ばすわけです。そして社会主義市場経済という言葉ができて、今まで以上に資本主義化を進めていく。

中島:

その素地はあったんだけれども、もっともっと進めようということですよね。


青木:

加速させるということですね。資本主義経済システムのキーワードである市場経済という言葉を高らかに出すわけですよ。どうなったかというと、実際に経済は大発展するんですね。ひとつ数字を挙げておくと1人当たりのGDP、改革開放が始まった頃の1980年は307ドル。


中島:

3万ぐらいですね、今のレートで言うと。


青木:

当時の日本が9500ドルなので日本の30分の1なんです、国民1人当たり。これが1989年406ドル、ちょっと上がってます。2000年、社会主義市場経済が始まって8年後、951。10年経たずして倍以上になるんです。そして2010年、4500ドル。10年間で5倍。


中島:

というぐらいの発展の仕方なんですね。

青木:

そうなんですよね。世界の工場というふうに中国は言われるようになる。ついでに言うと今年、コロナの問題があったにも関わらず、中国の国民1人当たりのGDP1万840ドル。ちなみに日本が、予想ですけども3万9000ドルぐらいなので、日本の4分の1。


中島:

というところまで来ているわけですよね。


青木:

いろんな問題は起こったけども経済を発展させるということに関しては成功者と言わざるを得ないですね。


中島:

今日黒板がありますけれども、これはどういうものですか?

青木:

香港が今非常に話題になっているので、香港についても簡単に歴史を踏まえておこうかなと。何回か前にお話したアヘン戦争、あれでイギリスが勝って香港島を中国から奪い取るわけです。向かって左側のでかい地図、小さな点を打ってるでしょ、これは香港島ですね。わからないのでちょっと拡大しました。ここに広州という街があって、このへんがマカオかな。小さな島ですね。これを1842年にイギリスが領有するわけ。それから10数年後、1860年に香港島の対岸にある九竜半島、その一部をイギリスが獲得する。そして1898年に半島の大部分、新界と言いますけども、これをイギリスは99年間にわたって咀嚼。いわゆる借り受ける。


中島:

ああいうのってどういうことですか?99年間って。


青木:

まず99年ね、これは99年経ったら返してもらうよという意味じゃないんですって。これは日本人の時代感覚と違うみたいなんですけども、中国の人たちに言わせると100、これは永久なんです。


中島:

ずっとイギリスが支配するよみたいな。


青木:

マイナス1でしょ、だから半永久。基本的にはそういう意味らしい。僕も99ってなんでって前から思ってたの。そしたらそういうふうに説明してくれる人がいました。その99年目が1997年に巡ってきたわけですね。

ただ、借りたのは新界だけだから、香港島と九竜半島の一部はイギリス領なので、借りているわけじゃないんです。返さなくてよかった。ところが鄧小平さんが1984年に当時のイギリスの首相だったサッチャーさんに返せと。返さなかった場合には人民解放軍を動員する。武力に訴えてでも取り戻す。そういうことがあって、サッチャーさんがそのときに折れて、本当は返さなくてもよかった香港島を返すことになった。

ただし1840年から、42年からずっと百数十年間にわたってイギリス流の支配をしてきた。イギリスと同じように言論の自由もそこそこあるという中でここの人たちは暮らしてきたので、しばらくはそういう政治環境、経済環境に手をつけないでくれと、それは鄧小平がOKするわけです。一国二制度。中華人民共和国の領土ではあるけども、資本主義経済システム、というかこれまでのシステムを50年間は認めますと言っていたんですね。それを2000年代に入って、特に習近平体制になって壊していっていますね。


中島:

50年経てばいわゆるそのまま戻ってくるのに、なんで性急に今こんなことになっちゃったのかなというのが大方の疑問ですよね。


青木:

いろんな理由があると思うんですけども、ひとつには2000年代に入って香港の人たちの民主化運動、中華人民共和国に併合されたくないと、50年後にね。そういう動きが高まっていくんですよ。そういう動きが起こると中国領内のたとえば少数民族のウイグル人、あるいはチベット、昔から独立運動が盛んなんですが、こういったところに刺激、これが与えられる可能性がある。

中島:

波及していくかもしれないと。


青木:

これは習近平さんは、これまでの指導者たちよりも怖れている。これまでのお話ってたとえば毛沢東とか鄧小平とか周恩来、革命第1世代というのが体を張ってね、、、いろいろやらかしたけども、体を張って国を作ってるじゃないですか。習近平さんって2世なんですよね。だから大した業績がないわけです。なのに人的関係なんかで頂点まで上り詰めた人なんです。だから業績を残さないかん。「これは俺のレジェンドだよ」というのを見せる必要性がある。


中島:

いわゆる政治的レガシーとか最近言われる、自分がやった遺産はなんなんだってことですよね。


青木:

そのひとつはウイグル人やチベットの人たちがやっているような独立、それは絶対に認めない。中国の分裂について私は断固たる対応を取った。香港に対してもそうだよというところが動機にあるんじゃないかなと思うんですよね。


中島:

だからそこのところがすごく不思議。


青木:

経済的にも香港を今のまま放っておいたほうが外資の導入をね。


中島:

それ言われるんですよね、経済的にも中国は香港を今のままのほうが、絶対中国にとってはプラスだろうと。


青木:

経済的にはプラスのはずなんです。だけどもさっき言ったように中国の内部でいろいろガタガタする状況があって、民族独立的なね。そういったものに対して恐怖感というか、ひょっとすると香港の民主化運動というのが起爆剤になってしまうんじゃないかなと、それを習近平さんは怖れているんじゃないかというのが、そういう見方があって、僕もそうじゃないかなと思うんですよ。


中島:

中国を見てきましたけれども大変な歴史だし、今後どんなふうなところに向かっていくのかなという、結局これだけの人口がいるからそれを賄うために今いろんなところに進出していって、アフリカだってそうでしょ。アフリカだって資源がたくさんあるから中国はいろいろ絡みたいわけだし、南シナ海のほうだって、これだけの人口を養うためにはというところなのかなというふうには思うんですよね。


青木:

その通りなんですよ。中国共産党、習近平さんを含めて、共産党の面々が一番怖れているのはアメリカでもなければ日本でもなんでもないんです。なにが一番怖いかというと自国民なんです。


中島:

そういうことでしょうね。


青木:

豊かになりたいという自国民の要望、これに応えられなかったらソ連のように俺らも終わりだと。そのためには、豊かにするためには世界中の資源が必要になってくるわけです。そのためには対外膨張、アメリカとトラブっても、ベトナム、日本とトラブっても知ったことじゃないと。


中島:

これは今後ちょっと怖いですね。


青木:

ですね。中国に国際的ルール、これを守らせながら仲良くやっていくというのが基本的な関係性だと僕は思うんです。日本だって中国、輸出も輸入も最大でしょ。


中島:

結局日本も本当に、今、世界的なつながりとして中国がないなんていうのは世界的にありえないですもんね。


青木:

そうなんですよ。これは5Gの問題も含めて、いろんなもので中国って先行してるんですよ、科学的な知識も含めて。その中国とまったく無関係に日本が立ち入っていくというのはありえないですよね。中国については怖れつつ批判しつつ関係を続けなくちゃならない。そのためにはまず中国の歴史を勉強することから始まるのではないかなということで長々としゃべったわけですよ。


中島:

僕が学生のときには眠れる獅子というふうに言われていたところが、もう全然起きてすごいことになっちゃってるなという。


青木:

なっちゃってますよね。


中島:

中国の歴史でした。今後また違うところを見ていきますのでチャンネル登録よろしくお願いします。








閲覧数:4回0件のコメント

Comments


bottom of page