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【パレスチナ問題⑤】暫定自治協定成立もなお…【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0044】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。

パレスチナ問題、まだまだやっぱり現在まで続けていかないと今のニュースが読み解けないということで、今からちょうど私もいろいろわかるような小学生から中学生から高校生から今というふうに続いていくんですけれども、イスラエルという国が建国し、そしてずっと中東戦争というのをやっていてエジプトが疲れたと。そしてサダトの暗殺。


青木:

1973年の第四次中東戦争でイスラエルとアラブ国家がバンとぶつかるような、いわゆる戦争は一応これで終わりなんですね。1987年なんですけども、第三次中東戦争でイスラエルが占領していたガザ地区、そしてヨルダン川西岸地区、あそこでパレスチナ人の青年たちによる一斉蜂起が始まるんですね。これはインティファーダと言いまして、アラビア語で蜂起。

中島:

これというのは結局ずっと戦争が終わってもそこに押し込められて虐げられたという。


青木:

そうですね。特にイスラエル軍によって軍政が敷かれるわけです。そのもとで育ってきたパレスチナの青年たち、占領後20年経ちますからね、1967年から。


中島:

だからずっとそれしか知らない青年たちがここで爆発するんですよね。


青木:

とりあえずそのへんに落ちている石を拾って、それをイスラエルの戦車隊に投げつけて、もちろんその逆襲も展開されるわけですね。イスラエル軍の機関銃によって多くのパレスチナ青年たちがなぎ倒されていく。これがCNNみたいなニュースで世界中に動画が配信されるわけですよ。これを見てアメリカのユダヤ系の市民たちが心を動かされるわけです。

中島:

いわゆる同胞たちがなにをやってるんだという。


青木:

かつてナチスにいじめられた我々が、我々の同胞がパレスチナではパレスチナの青年たちを、ほとんど無防備の青年たちを虐殺していると。もう流血はたくさんだというふうな声がアメリカを動かしていく。するとこれが大統領のクリントンさんを動かして、なおかつこれは以前お話しましたけど、ノルウェーみたいな国も仲介に入って、対立しているイスラエルとパレスチナ人の組織であるPLO、パレスチナ解放機構ですね、当時の議長アラファトさんですね。

中島:

アラファトさんでした。


青木:

その間を取り持って1993年にパレスチナ暫定自治協定というのが結ばれるわけですね。


中島:

これもすごいことですよね。


青木:

歴史的な快挙だと思いましたね。こじれにこじれた両者の関係をアメリカとノルウェーなんかが骨を折って間を取り持って、なんとか暫定的ではあるけども和平協定を結ぶわけです。内容を簡単に言っておくと、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の中のイエリコという街があるんですけども、ここからとりあえずイスラエル軍は撤退すると。

ヨルダン川西岸地区に関して言うと、第三次中東戦争以来、貧しいユダヤ人たちが入植をしていたんですね。彼らを見殺しにはできないということで、ガザ地区みたいに全面撤退はしなかったんです。比較的ユダヤ人が住んでいなかったイエリコの街だけは全面撤退。

ヨルダン川西岸地区のイエリコ以外の地域、ユダヤ人が入植している場所ですね。そこに関してどうするかについてはこれから話し合いを進めていきましょうと。だからあくまでも暫定自治区

これでパレスチナのこじれた問題、一歩和平に向かって


中島:

前進した。


青木:

とみんなが思ったんですよ。ところがこれに真っ向から反対する人たちがいた。誰かというと、文字通りヨルダン川西岸地区に入植したユダヤ人たち。1967年からの入植が始まるわけですね。誰が入植したかというと、若くて貧しい、言うなればイスラエル本国で土地が持てないような貧しい人たちが新天地を求めてヨルダン川西岸地区の占領地域に入植するわけですよ。以来1993年まで27年間、やっと畑を耕して、土地を持って、家を建てて、子供も産まれた。その子供たちが孫を作ろうとしている。生活の基盤がやっとできたときに敵対勢力であるPLOと友好関係、和平関係を結んで、下手すれば我々もヨルダン川西岸地区から出ていかなくちゃならないかもしれない。それだけは絶対に嫌だと。


中島:

これは大変ですよね。

青木:

この気持ちは理解できますね。入植しなさいと言われたので我々は入植して頑張ってきたと。なのにこれまで築き上げてきた生活を根本から捨てなくちゃならなくなるかもしれないと。こういう声がイスラエルの国内で沸き立つわけです。

するとPLOに対して強硬派であった人たち、その一部のテログループが1995年に和平協定を結んだ首相のラビンさんを暗殺しちゃうんですね。


中島:

これで世界中がまた「これ大変なことになっちゃったな」ということになりましたよね。


青木:

なりましたね。それ以降はPLOなんかに対して強硬な態度を示していたリクードと言われる政党があるんですよね、ネタニヤフさんなんていう首相もいますけど。このリクードが実権を握って、事実上パレスチナ暫定自治協定をサボっている。それどころかユダヤ人が入植した場所とパレスチナ人が住んでいる場所の間に壁を作って、トランプさんみたいに。で、入植者たちの生命や財産を守ると。

これをめぐって2000年代に入って、いわゆる対立がまだ続いているわけですよね、現在に至るまで。


中島:

これ本当に。僕、ネットフリックスに入ってるんですよね。そのあたりのドラマとかがあるんですよ。「ファウダー」といって、今もってやっぱりイスラエルの人たちとユダヤの人たちが潜入したり潜入されたりという、テロを起こしたりということをずっと繰り返しているというドラマなんですよね。

青木:

そうなんですね、解決の糸口が見つけられないという感じも一方でするんですよね。ただ僕もこの前、NHKの衛星放送でドイツのZDFというテレビ局があるんですけど、そこが作ったドキュメンタリーを見たんです。前もご紹介したようにイスラエルという国、ユダヤ人が中心なんだけど、20%はアラブ系のイスラム教徒だったりするんですね。そのイスラエル国内のアラブ系イスラム教とユダヤ人の隣人関係を描いたドキュメンタリーがあった。普通に仲良いんですよ。


中島:

それはこの家の隣の人が違う宗教で違う民族であろうとも、それは醤油の貸し借り、味噌の貸し借り。


青木:

そうなんですよ。娘さんが結婚するとなったらばアラブ人のほう、パレスチナ人のほうがハグをしにいって「おめでとう、おめでとう」と言うわけですよ。アラブ人パレスチナ人のほうに子供が産まれると「おめでとう」といって来るわけ。そういうのを見てると、人間って宗教が違っても、過去にいろんな歴史があっても、根本的には理解し合えるものだと。それがそうならないのは、対立を利用して。


中島:

そうなんですよね。結局利益を得ている人間だとか。


青木:

本当にとんでもないやつがね。


中島:

いやー、そうなんですよ。そこが教育の一番大切なことなんですよね。


青木:

人間そのものの間に根本的な対立というのは実はないんですよ。そのへんをイエス様もアッラーも、僕らが信仰している仏様も、自分のことばっかりじゃなくて相手のことを考えましょうと、これは何千年も前からずっと訴えられてきた。

中島:

結局はそこをちゃんと守らなければ諍いになるよというのが何千年も前からわかっていたということですよね。


青木:

そこさえ守っていればいろんなものが違っても仲良くやっていけるんだと。そういうことをね今更ながら教えてくれたドキュメンタリーだったですね。


中島:

ひとつは結局欲望とかいうことになるのかなという。しかも富というのは海水と同じで飲めば飲むほど喉が渇くというふうなことも聞くし。


青木:

そうですよね。人間は持てば持つほど不自由になっていくんですよね。そんな気がします。

中島:

とにかくパレスチナ問題ということで長いことやってきましたけれども、次回どうしますか?


青木:

あとイランとイラクの問題についてもちょっと触れておきましょうかね。


中島:

イランとイラクの問題って僕がちょうど高校のときで、社会の時間、いわゆる倫理社会の先生がイランイラク戦争の話をして、このイランイラク戦争というのはもしかしたらもうずっとこれから君たちが大人になっても続くかもしれないよというふうに言っていたんですけれども、実際はそうならなかったなというところがあるので。ちょうど時間となりましたので、次回からはイランとイラクの話です。








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