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【核兵器の歴史④】レーガンとゴルバチョフ。そして今【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0058 】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:【核兵器の歴史④】レーガンとゴルバチョフ。そして今

中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

核3回目ということですけれども。


青木:

80年代前半にレーガンが登場して、彼なりの核軍縮交渉をソ連に持ちかけるけども、結局うまくいかなかった。世界的な核兵器に対する危機感が高まっている。そこまで前回お話しました。そのあとどうなるかという話なんですが、レーガン政権が1981年に登場して、国防予算を倍に増やして、前のカーターさんと比べて倍に増やして、国家財政がめちゃくちゃにな

るんです。


中島:

自分の国を守るために予算を使って自分の国の経済がガタガタになるということですよね。


青木:

破綻なんです。これにはさすがにレーガンは気がついて、1985年のレーガン2期目から方針を転換する。うまい具合にソビエト連邦もアメリカの軍備拡張に付き合っちゃって、アメリカ以上にソ連も経済破綻しちゃうんです。


中島:

ここでやっと自分たちが軍縮の方向に進んでいこうかという話になるんですよね。


青木:

目が覚めるわけ、両方ともね。幸いソ連にはゴルバチョフという、これまでのソ連の共産党の指導者に比べると幅広い視野を持った、そういう価値観を持った人間が登場して、レーガンとゴルバチョフと話し合いが進められていく。1987年に中距離核戦力全廃条約INF全廃条約というのが調印されるわけですね。


中島:

中距離で撃つやつは全廃しようということですよね。


青木:

これは核兵器の開発の中で制限じゃなくて全廃したというのが大きいですね。これは日本を含めてみんなが


中島:

ホッとしたということですよね。


青木:

そのうちにソビエト連邦が1991年に崩壊。でもまだ核兵器は持っているというので核軍縮交渉というのが進められていくわけですね。STARTという戦略兵器削減交渉、これが進められていくわけです。前回お話したSOLT、戦略兵器制限交渉と違って、こちらは核弾頭そのものです。SOLTのほうは核兵器を運搬する爆撃機とか地上発射基地とか、そういったものを制限する。対してこちらは核弾頭そのものの数を減らす。減らすといってもまだ地球を何回も滅ぼす


中島:

何万発も持っているわけですから。


青木:

何万発を何千発にするという。ただ核弾頭そのものの数を減らしたというのは核軍縮の点では大きな一歩だったのは間違いない。しかしながらそれをあざ笑うかのように、そういった米ソの歩み寄りをあざ笑うかのように、さらには核拡散防止条約をあざ笑うように核を保有している国々はどんどん広がっていっている。

欧米の国々以外では1964年にまず中国が核兵器を持ちますね。前回申しましたようにまだ中国、1964年、僕は小学校2年生だったんです。当時はまだ国際連合に加盟していませんけど。緊急朝礼があったんです。


中島:

小学校2年生のときですか。


青木:

ゴビ砂漠で核実験をやる、大気中核実験。だから偏西風に乗っていわゆる死の灰が降るんじゃないかって。覚えてるんですよ。僕の行っている小学校で緊急朝礼があって校長先生が「明日雨が降ったら学校は休校です」と。それは死の灰が雨になって夜、降ってくるから。


中島:

そういうことですね。死の灰というのは第五福竜丸のときにできた言葉ですけれどもね。


青木:

次の日は小雨だった。当時電話なんかないので、今だったら電話してどうですか?って聞くじゃないですか。あるいはホームページがあるじゃないですか。伝達手段がないから、みんなブツブツ言いながら「もっと降ればよかったじゃん」とか言いながら傘をさして学校に行った。

1970年代に入るとインドがやっちゃうんです。1974年、当時の首相は女性のインディラ・ガンジーさん。お父さんはネルーさんという大政治家ですけど。インドといえば隣のパキスタンとものすごく仲が悪いと。国防上の観点から、中国とも関係が悪いんですよ。国防上の観点から核兵器を持つわけですね。


中島:

インドが持ったら今度はパキスタンという話になりますから、結局核拡散というのがなかなかができないし、核拡散せずにいこうと言ってるところは持っているじゃないかというところの矛盾ですよね。


青木:

そうですね、おっしゃる通りインドに続いてパキスタン。2000年代に入って北朝鮮ですね。たぶん南アフリカも白人の差別政権のときに持っていたんじゃないかと言われていますね、戦術核兵器。でも南アフリカ共和国の北側に黒人国家がいっぱいできるわけです。そういった国々に対する脅かしというか、そのために白人政権のときに核開発をやっていたようです。ただし、南アフリカはアパルトヘイトを停止した直後に、核兵器については全廃したん

です。


中島:

やろうと思えばできるんですよね。


青木:

動機はいろいろあって、核兵器を黒人の手に渡したくないという気持ちもなきにしもあらずだったらしいんですよね。ただ全廃できたという事実はおっしゃったようにあるんです。そういう中で結局核兵器を持っている国々は広がっていくということなんです。

一方、1996年なんですが、包括的核実験禁止条約というのが結ばれるんです。

前回、部分的核実験停止条約をやりましたけども、今回の包括的核実験禁止条約、CTBTというんですけど、略称で。これはいわゆる臨界、爆発を伴う核実験は一切認めない。そういう意味では安全な核実験ですよみたいなことは言うんです。それから包括的核実験禁止条約の前に年、1995年に核拡散防止条約の無期限延長、これも採択されるわけです。しかしさっきも言ったようにそれを尻目に核兵器を持っている国々というのは広がっていくわけです。

前々回ですけども、中島さんからチラッとおっしゃった被爆国としての日本だからこそ言えることがあるんじゃないかと。でもなかなか言ってないよねという話なんですよね。


中島:

それこそ10年ぐらい前までは世の中の風潮としてもっと言うべきだという声が大きかったと思うんですけど、最近アメリカの核の傘に隠れている日本だからこれは言えないだろうという風潮のほうが大きくなっている、強くなっているような気がするんですよね。


青木:

それが如実に表れるのが核兵器禁止条約に対する日本の態度なんですよね。


中島:

これに署名していないということですよね。


青木:

核兵器禁止条約って2007年に中米のコスタリカ、それから東南アジアのマレーシア、この2国の提案でもって国連の場で採択された条約なんですね。動機はなにかというと核を保有している国々、核拡散防止条約に皆さん調印しているわけです。そこには「核兵器廃絶のために努力する」という一文があるんです。でも努力してないよねと。廃絶に向かってきちんとした歩みをしてないよね、じゃあ禁止してやる、使えないようにしてやる、そういう枠組みを作ると。そういう提案がなされて、多くの国々が参加をし、発行したんです。



中島:

これが大きなニュースになりましたよね。


青木:

残念ながらしかし日本は妙な論理ですよね、核を持っている国々と持っていない国々の橋渡しの役をすると。どういう役回りなんだろうと。


中島:

これが日本の今の


青木:

議論としてたとえば北朝鮮から核ミサイルが飛んでいく危険性に対してどうするんだ、北朝鮮にミサイル撃たせないためには、撃ったらアメリカが報復するぞと、これが一番大きいんだよって。これは確かに議論としては成立するんですよ。でも核兵器って地球のどこでも一発でも撃ったら終わりなんですよね。一発でも打たせないような、そういう枠組みというのを世界的に作っていくというのはかなり現実性があるというような気がするんですよね。そこにたとえば日本が核兵器禁止条約に署名をする、かつて佐藤栄作さんという人が非核三原則というものを閣議決定だったかな、表明しました。日本には核兵器を持ち込ませないと、それを含めて非核三原則。そういう立場をもういっぺん堅持して、アメリカの核によって日本を守ってもらおうと思いませんと言った場合に日本が北朝鮮の核ミサイルの攻撃目標になるだろうか。このへんは議論が必要なところなんですけどね。



中島:

本当に難しい話なんですけれども、とにかく核というものに対して人類がどう向き合ってきたか、今歴史的な事実をいろいろご紹介しましたけれども、それに対して見てらっしゃる人たちがどう考えて今後自分がどう行動すべきなのかとか意見を持つべきなのかということですよね。


青木:

最後に一言だけ付け加えておくと、前回お話した中距離核戦力全廃条約、1987年に調印されたんですけども、2年前の2019年2月に当時のトランプ政権が離脱をしちゃったんです。事実上あの条約って失効しちゃったんです。そのときトランプさんがなんとおっしゃったかというと、INF全廃条約というのはアメリカと旧ソ連、当時のロシアとの二国間条約だった。今は中距離核戦力、中国が2000発以上持っている。よって、中国を含めて新たな枠組みを作らないとダメだということを、口実なんだけどおっしゃったわけです。僕はそれは正しいと思います。トランプ政権にもういっぺん復活してもらおうと僕は思わないけれども、バイデンさん、これは正しいと思うので、新たな枠組みを作るという。


中島:

そこのところで持っている国がやっていかないと。しかもそれだけいりますか?っていつも思うんですよ。2000発とか何万発とか聞いて、それだけいらないでしょって。それが不思議なんですよね。


青木:

なかなか難しい。








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