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【漫画に描かれた歴史】三国志【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0063】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:【漫画に描かれた歴史】三国志

中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

今週から何回かにわたって、皆さんが歴史の入り口としてこういうところどうですか?って、漫画で入ってみませんか?という話なんですよね。


青木:

いきなり歴史の本ってちょっとハードルが高いところもあって、一方で日本にはすばらしい漫画、作者、おられるわけですね。


中島:

手塚治虫先生がいなかったらこういうことにはなっていなかっただろうという。


青木:

すべては手塚治虫先生から始まるんです。


中島:

本当のエピソードがどうかわからないけれども、外国から来た大人が日本の通勤電車でサラリーマンが漫画を読んでるのを見て「日本って大人が漫画読んでるの?」というふうに言ったら日本人が「君の国には手塚治虫さんがいなかっただろう」と言ったらしいんですよ。


青木:

すばらしい。


中島:

つまりそれぐらい手塚治虫さんの功績というのはすごいんですけれども、ただ僕、実はこういうYouTubeをやってますけれども、高校のときに歴史があんまり得意じゃなくて。社会が苦手で、国語と英語で受験をカバーしたぐらいなんです。社会が得意なやつに受験が終わって聞いたんですよ、「お前、なんであんなに得意だったんだ?」と。そしたら「マンガで読む日本史」を小学生のものを全巻最初に読んでそこから参考書に行ったという。漫画で読む

とある程度の流れというのが頭の中に入るらしいんですよね。


青木:

それはすごく効率の良い方法。なぜかというと人間は具体的にイメージがあったほうが覚えるんですね。具体的なイメージがあってそれがストーリー化されたらもう忘れないんですよ。


中島:

セリフもすごい印象的に残るらしいんですよね。性格とかセリフとか。そしたら史実に近づきやすいらしいんです。そこから参考書に行くとものすごい近道だという話は聞きますよね。


青木:

もちろん漫画で描かれている世界というのは全部が事実じゃないので。


中島:

フィクションも入っていると。


青木:

だけど取っ掛かりとしては非常に良いということで今日から何回か私が読んできた漫画。


中島:

先生は今でも読んでるんですよね。


青木:

まあまあですね、鬼滅の刃はまだ読んでない。


中島:

お好きですよね。今日はなにから行きますか?


青木:

1回目は横山光輝先生の「史記」それから「三国志」。


中島:

これは読んだという人多いんじゃないですかね。三国志はここから入ったという人多いでしょ。


青木:

僕もです。


中島:

魏・呉・蜀の話ですけれども、これで入っていくという人は多いです。曹操なんていうのはものすごく日本では悪者で書かれているというところ、物語のおもしろいところで、それで書いちゃったらみんなそう思っちゃうんですよね。


青木:

本当はちょっと違うんですけどね。


中島:

蜀の国が主人公として描かれていると。


青木:

その前に「史記」という作品もあって、司馬遷ですね。我々歴史を勉強する人間にとって史記を書いた司馬遷というのは神様ですね。


中島:

司馬遼太郎さんも司馬遷から司馬という名前を取ったという。ただかなり虐げられてそれで歴史をきちんと残さなきゃいけないみたいなところからの。


青木:

そうですね。横山光輝先生そのものなんですけども、1934年のお生まれで2004年ですね、70歳でお亡くなりになったんですが、「鉄人28号」とか「魔法使いサリー」とか、そうした作品で有名。


中島:

「魔法使いサリー」もそうなんですね。


青木:

ああいう漫画を描かれる一方で歴史的な漫画、全部で60巻あるんですけども、何部売れたか知ってます?8000万部。8000万部ですよ。


中島:

中華に行ったらだいだい置いてますから。チャーハンのおいしい店に行ったらだいたい並んでますから。


青木:

史記のほうからなんですが、もともとは司馬遷の書いた作品で、三皇五帝の時代という中国の伝説の時代から彼が生きた、司馬遷が生きた前漢の武帝の時代までかなり長い時代を網羅した歴史、人類史上最高の歴史の本だと思います。書いていくスタイルが紀伝体というスタイルで、糸へんに己という字で伝える。歴史を書いていくスタイルに2つあって、ひとつは編年体、もうひとつが紀伝体。編年体というのは歴史の教科書なんかがそうであるように、起こった順番に年代順に並べていく。これに対して司馬遷がとった方法というのは紀伝体で、簡単に言うと人物中心なんです。この時代の中心人物であった王や皇帝、この人たちがなにができてなにができなかったかがわかるとだいたいこの時代のことは大づかみにわかる。年代順に追っていくと、確かに史実を追うのはできるんだけども、その時代がどういうものかというイメージが湧きにくいんですよ。これに対してその時代が中心人物に焦点を置くと、だいたいその時代が理解できる。大づかみにその時代が理解できる。そういうメリットがあるものですから、中国の歴史というのはほぼ紀伝体のスタイル。


中島:

すごいですよね。


青木:

しかもおもしろいのは中国って、このあと特に前漢王朝なんかか滅んだあとだけども、ある王朝が滅びるじゃないですか。次にできた王朝が必ず前の王朝について歴史をまとめていく。


中島:

分析させるんですよね。


青木:

なにが知りたいかっておっしゃったように、なにを分析させたいかというと、前の王朝がなんで滅んだかなんです。


中島:

失敗をなんでしたかという。結局一番ダメなのは栄華を極めているところが自分ところの歴史を書かせると、それはお世辞の歴史でほぼわからなくなっちゃう、嘘なんかも入ってきちゃう。でもこれはそうじゃないですよね。


青木:

そうなんですよね。そういうきちんとした歴史を書いていくという伝統があるので、そのベースを作ったのが司馬遷。それを基に漫画も書かれているわけですね。史記由来の有名な言葉はごまんとありまして、「背水の陣」とかね。あと「国士無双」麻雀の役ですけども、これは主人公である劉邦の部下だった韓信、彼のことを「天下に二人といないすごい男だ」そういう意味合いで「国士無双」と言ったんです。あと「四面楚歌」これは前漢王朝ができる直前に前漢を作った劉邦のライバルだった項羽。項羽さんが敵に囲まれてまわりは全部敵だった。それを象徴的に示した言葉です。


中島:

四面楚歌、項羽と劉邦って司馬遼太郎さんも書いてます。


青木:

あと「切歯扼腕」歯ぎしりして。これも戦国時代の外交評論家に張儀というのがいて、彼の言葉から出てきたんです。


中島:

「臥薪嘗胆」とかもそうだと。


青木:

そうですね。史記そのものにはどっちかは出てこないんですよね。俳優に松坂桃李さんっておられるでしょ。桃李という名前も、言葉も実は司馬遷の史記に出てくるんですよ。


中島:

桃って中国にとってはかなりの、桃源郷とか。桃って中国の人たちにとってはすごく。


青木:

繁栄の象徴なんですよ。桃李の桃、李はすももです。中国人は大好きで、その木が実をつけるとみんながそこに集まってくるみたいな人間にならなくちゃならないよという話なんです。桃李みたいな人間にならなくちゃならない。人を寄せ付ける人望のある人間、そういった人物像、言うなればシンボルですね、桃李という。松坂桃李さんもね。


中島:

どういう話ですか。


青木:

三国志ですね、これは前漢後漢、後漢王朝が滅亡したあとの魏・呉・蜀の三国の騒乱を描く。政治経済的な力そのもので言うと魏の基礎を築いた曹操という男が一番の中心人物なんです。ですが、漫画の三国志の中ではどちらかと言うとヒール役で描かれている。


中島:

だってあれだけの領土を獲得して、すごい男だなと思います。


青木:

私が買った本に「三国志群雄173人、採点データファイル」というのがあって。これに決断力とか軍事戦略とかいろいろあるんです。曹操はなんと書いてあるかというと、戦略的なものは満点。ただ義理人情が5点なんです。こういうものにとらわれないのがこの人の魅力。かなり冷徹な政治家だったのは間違いないと。ただ実際に三国志というちゃんとした歴史の本、王朝が作った歴史の本の中ではそれなりの人物としてしっかり描かれています。たぶん歴史上の人物で中国人に人気投票をやったらたぶん1番か2番になるんじゃないかなと思うんですよ、劉備玄徳の部下だった関羽。関羽か曹操か。


中島:

僕は関羽だと思ってました。


青木:

神様ですもんね。


中島:

そうなんですよ、中国のお寺さんとかに関羽の像がわーっとあるぐらい。やっぱり人間って人情にほだされるんだなという、ああいう熱い男がやっぱりみんな好きなんだなという。


青木:

特に関羽で有名なのが戦いに負けて落ち延びてきた曹操、それを逃がすシーンがあるんですよね。それはまた劉備玄徳も咎めないんだけども、そういった義理人情に篤いところ、それから主君様に対しては忠義を尽くすと。そういったところというのは中

国人は神として崇めるぐらい尊敬してるんですよね。よく中国人のことをドライだと言うけども関羽をあれだけ祭り上げるというのは基本的な考え方って俺たちと変わらないんじゃないかなと。


中島:

僕は肌の色とか言語とか関係なく、おそらくやっぱり温かいものって人間ってみんなあるんじゃないかと思います。


青木:

おっしゃる通りだと思います。ちなみに曹操に関しては今から15年ほど前ですけども、シンガポールの人気歌手にリン・ジュンジェという人がいて「曹操」という曲を作ってますもんね。


中島:

やっぱり中国の歴史って日本でもよく、僕も三国志を読みました、吉川英治さんで読んだんですけど、そういう歴史をみんなある程度の周辺の国々とか地域は勉強してるんですね。


青木:

そうですね。曹操みたいに我が道をしっかり歩んでいくそういう強い男になりたいという意味でリン・ジュンジェさんが「曹操」というアルバムを作って、東南アジアを中心に30万枚売れたんです。


中島:

そうなんですか。


青木:

ということで、三国志そのものの中身はあれなんですけども。

中島:

日本でいうと劉備玄徳、それから諸葛孔明あたりが人気になるんですかね。それは吉川英治さんのをもとに横山光輝さんがこの漫画を大ヒットさせたからそうなっているんじゃないかなと。


青木:

思いますね。これなくして三国志人気はないんじゃないかなと。


中島:

今日は三国志でした。








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