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2024年は選挙の年(3)アメリカ大統領選挙【青木裕司と中島浩二の世界史ch:286】

更新日:2月15日



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


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中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

2024年がどんな年か、ひとつは大きなアメリカ大統領選挙。


青木:

今年の最大のイベントですね。


中島:

だって誰になるかとか、どっちになるかで世界情勢が大きく変わる。しかも今紛争が、ロシアとウクライナ、しかも中東もあるでしょ。トランプさんなのか、それともバイデンさんなのか、バイデンさんも年齢的にもね。


青木:

だって81でしょ。


中島:

見ててコメント的にやばいなとか、歩き方とか見てて。


青木:

実際に健康的にタフでないとアメリカ大統領というのはやってられないです。


中島:

変な話、体力がないときちんとした判断を下せるのかなという。


青木:

それもありますよね、実際に。実は言うとアメリカで民主党を支持している人たちの本音は、バイデンが「私やっぱりやめます」と言ってくれないかなと。


中島:

違う候補を立てるということですか?


青木:

そうですね。違う候補を探すのも今から大変なんだけどね。ただアメリカの場合、現職の大統領が「私行きます」と言ったら、基本的にやめるとは言えないらしいんですよね。だからバイデンさん自身がやめると言わない限りはバイデンさんでこのまま行くんだろうと。一部の民主党支持者はバイデンさんの奥さんにやめろと言ってほしかったみたいなんだけど、奥さんもやめるとは言ってないみたいなので。


中島:

相対するトランプさん、この前の初戦ですけれども、候補者指名争いの初戦で圧勝したと。


青木:

圧勝した。アイオワ州の党員集会で50.1%の得票ですね。第2位だったのがフロリダ州の知事だったディサンティスさん。そして第3位が元国連大使のニッキー・ヘンリーさん。事実上この3者が争うことになったんだけど、おっしゃったようにトランプさんが圧勝したということですね。なおかつこの収録は1月22日にやっているんですが、入ってきましたね。



中島:

午前中にディサンティスさんがあのトランプの圧勝を見て、自分はもう目がないなと思ってやめると。


青木:

そう。ディサンティスさん自身はまだ若いですよね、45歳か。だから次。次の選挙、あるいは次の次の選挙に打って出るためには、今回の共和党の大統領指名レースで3位になるわけにはいかないんです。このまま行くとどうもニッキー・ヘイリーさんが2位に踊り出そうなんですよね。


中島:

ひとつは女性ということもあるし、国連大使でやっていたというところもあって、じわじわヘイリーさんがということみたいですね。


青木:

去年の10月11月ぐらいからいわゆるウォールストリートの金融業界、2016年の大統領選挙のときにはヒラリー・クリントンさん推した勢力、これが今回はバイデンじゃなくてニッキー・ヘイリーで行こうかと、その動きが出始めているという話もあるんですよね。


中島:

それは民主党にってことですよね。


青木:

そうそうそう。


中島:

これ実は共和党の候補指名争いだけれども、相対する民主党もいろいろ絡んでくるというものなんですよ。共和党の人たちだけでやるみたいだけど、実はこの人のほうが与しやすいとか、戦いやすいとかでいろいろあるんですよね。


青木:

共和党の候補にもしもニッキー・ヘイリーがなったら間違いなく勝つんですよね、たぶん。


中島:

だからヘイリーさんになってほしい。


青木:

トランプさんの場合はもちろん熱烈な支持者もいるけれども、アンチトランプも共和党の中にもいるわけですよ。そういった人たちの支持がニッキー・ヘイリーさんにこのあと集中していけば、さっきも言ったけどディサンティスさんが2位になるのはもう無理なんですね。だからディサンティスさんは早めに撤退を表明して、次か次の次に備えると。



ニッキー・ヘイリーさんはやる気満々みたいですね。彼女は彼女でまだ52歳なので、今回がダメでも次があるわけです。トランプさんは次はありませんから。アメリカ大統領というのは2期8年以上はできません。続けてじゃなってもダメなんです。とにかく2期8年以上は絶対にできないことに憲法上なってるので、そういうことで、次の4年後の大統領選挙にはヘイリーさんがたぶん強力な候補として出てくるんじゃないかと。そのためにも今回は頑張っておく必要性があると。


中島:

トランプさんとバイデンさんとなったときに、今バイデンさんって結構迷走しているようなイメージですよね。


青木:

そうですね。ひとつ運が悪いのはアメリカで悪性のインフレが進行していて、それに対して効果的な対処が取れていないということですね。外交的に見るとアフガニスタンから非常に屈辱的な撤退をしてしまったということですね。なおかつウクライナ戦争に関してもやはり効果的な手をなかなか打てていないということですね。


中島:

そして中東があんなことになっちゃったという、もうトランプさんとしては一言で言ってますよね、「バイデンなってこんな世界になってみんな良いのか」という。


青木:

そうそう。北朝鮮との関係も相変わらず対立したまま。「俺は金正恩と会って話したぜ」と。


中島:

そうなんですよ。


青木:

そうなんですよね。


中島:

人格者としてはどうなの?って思うけど、消極的選択とか消去法でいったらあの4年のほうが良かったんじゃないかと思っている人もちょっといるみたいですね。僕はどっちが良いとか全然なくてということですけど。


青木:

明確にダメ出しできるのは地球温暖化を防止するパリ協定から一方的に離脱をしたと。それ以外に関しては、特に外交の面に関しては業績と言えるものはまあまああるんですよね。


中島:

「俺はビジネスマンでこういう交渉はうまいんだ」と言っていたような感じになってるんですよね。


青木:

実際にあのあと金正恩と話し合いをして、朝鮮戦争の平和条約が結ばれたりしたら歴史に残りますからね。圧倒的レガシーになるもんね。


中島:

「俺がやめてバイデンになってこれだけたくさん弾道ミサイルを打ってるじゃないか」みたいなことも正論っちゃ正論みたいなことになっちゃいますよね。


青木:

僕ははっきり言ってトランプ大嫌いなんですよね、人格的にも。だけども彼の、今中島さんが代弁した、一部そうなんですよね。アメリカの熱烈な支持者、あるいはちょっとスイング、ふらついている人たちは「やっぱりそうだったよね、確かに」と思う人たちはたくさん出てくる。どの世論調査を見てもだいたいトランプさんのほうが5ポイントから6ポイント、州によっては10ポイント、バイデンさんを今の段階でリードしていると。


中島:

トランプさんになったらずいぶんとまたいわゆるアメリカファーストで行くでしょうから、今までのいろんなバイデンさんが関わってきたことから手を引くんじゃないかと。


青木:

これは前回も言いましたけども、ウクライナに対する支援はいっぺんにスパンとやめてしまうことはなかなかできないにしても、だんだん減らしていくのは予想がつきますよね。そのぶんどうするかというと「俺は別にウクライナを見捨てていない。そのぶんはNATOのヨーロッパの加盟国がやってくれ。隣国だろ?お前たちがやってくれよ。お前たちこれまでもNATO全体に対してあんまり金を出してないよな。多くの負担をアメリカはやってきた」と、事実なんですけどね。「これからは君たちも自助努力でヨーロッパを守ってくれ。隣国のウクライナが厳しいんだったら君たちが助けてやってくれ。俺たちアメリカは海の向こうだからな」と。これはアメリカ国民には説得力があるんですよね。


中島:

そうなると本当にどうなるか。あと中東もそうですよね。


青木:

中東もそうですね。50年前のアメリカにとって中近東というのは石油の産地として非常に重要だったんです。アメリカ自身も石油の産油国だったけども、それ以上にアメリカは石油を消費していたので、中近東の石油、特にサウジアラビアの石油、これはアメリカが中心になって開発をしていくんですけども、これが非常に大事だった。ところが、2010年代、特に2013、4年、シェールオイルがアメリカで爆発的に生産できるようになって、今はアメリカは世界最大の石油産油国ですからね。石油を巡る世界情勢はこの10年間でガラっと変わってしまったんですよね。

アメリカはこれまでほどは中近東に固執する必要性はない。ただイランが核兵器を持つ可能性はなんとかして封じ込めておきたいということなんですよね。

イスラエルなんですが、イスラエルもバイデンさんの時代にはなかなかグリップができなくて、結局ネタニヤフさんの対ハマス強行作戦というのをコントロールできていないですよね、今のところはね。はっきり言うと今のバイデン政権だとハマスとイスラエルの戦争に対してなすすべがないと。


中島:

僕もそんな感じがするんですよね。良い方向にまったく行っていないなという。


青木:

かといってイスラエルがこのまま順風満々にガザ地区を占領して、これも昨日だったかな、ネタニヤフさんがヨルダン川西岸地区に関してもイスラエルが責任を持つみたいなことを言い始めるんです。責任を持つということはヨルダン川西岸地区もイスラエル、要するにユダヤ人のものだと。これを発言しているに等しいんですよね。



中島:

そうなると本当にとんでもない混迷状態になるんじゃないかなと思うんですよね。


青木:

ずっと憎悪と連鎖がずっと続いていくということですよね。

ちなみに昨日だったかな、ガザ地区の犠牲者の数が2万5000人になったと。しかも一説にはそのうちの70%ぐらいは女性と子供たちではないかと。2万5000人の犠牲者ってすさまじいですよ。


中島:

本当にそう思います。


青木:

イスラエルってまわりのアラブの国々と4回にわたって大きな中東戦争をやってきましたよね。特にでかかったのが第3回と第4回なんですけども、第3次中東戦争、これはイスラエルがエジプトとかシリアとかヨルダンをコテンパンにやっつけた。そのコテンパンにやっつけられた第3次中東戦争のアラブの国々の犠牲者が2万人なんですよね。それ以上の犠牲者が。


中島:

あのちっちゃなところでということですよね。


青木:

そう。これをやり続けたイスラエルの未来、そんなに明るいものじゃないんじゃないかと。これは有名なアメリカのニューズウィークという雑誌、これが「イスラエルが敗北する日」と。確かに戦闘では勝っているけども、このまま行ったらイスラエルは国際的に孤立していくと。非常に独りよがりな国になってしまうと。国際社会の中で生きていけなくなってしまうんじゃないか、みたいなことがちょっと特集されてたんですよね。


中島:

中東の話についてはこのあとまた深くやっていきますのでどうぞよろしくお願いします。









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