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田中角栄とその時代(1)田中角栄、生誕【青木裕司と中島浩二の世界史ch:292】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。

(前回の記事「」は)+


【戦後日本の政治家関連記事】


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

今日から新しい章に入るということで、今政治を見てみたら本当に大変な時代になっちゃったねという、いわゆる平たく言うと自民党の裏金事件から始まって、なんなんだこれ、国民の負担率は本当に47%にも関わらずパーティー券を売ってノルマ達成をしたぶんはキックバックしてそれを記載していなかったという。

しかも3000万円ぐらいでラインを切って、逮捕される人と、そこまで行っていなかった人はなんとなくおとがめなしみたいな、これは脱税になるんじゃないの?とかいろいろ話が出ていて、「火の玉になって私が先頭に立ってやります」と言っていたわりには、「え?それ火の玉になってないんじゃないの?」って、一説によると自分自身が火だるまになっちゃっているという。昔の政治家ってどんな人だったかというのを紐解いていこうと。


青木:

とにかく今の政治状況を見ていて情けないと。もちろん政治家も情けないし、その政治家を選ばざるを得ない、選んでしまった我々国民もある意味情けないといえば情けないんだけど、そういうときに昔の政治家はおっしゃったようにどういう状況だったのか、なにかやっぱり違うものを感じるんですよ。


中島:

言っても第二次世界大戦で、太平洋戦争で負けて、日本どうなる?というところからワーッと日本を作ってきた人たち。ある種バブルとはいえ日本が経済大国まで登り詰めて、この前GDPが結局4位に転落しましたよと。でも80年代半ばはあれだけ日本の企業が世界の企業のトップ10の中に何社入っていましたかというところまで築き上げたということを考えたらすごいことですよね。


青木:

このチャンネルでも戦後の日本の基本的な政治経済構造を作ってきた1人として、これは2年前ですけども福田武夫さんという人を取り上げたんです。この福田赳夫さんの最大のライバルと言って良いのが今回シリーズでお話する田中角栄さんなんですよね。


中島:

田中角栄さんのことについて良いとか悪いとかじゃなくて、この人がどういう思いで宰相に登り詰めて日本を切り盛りしてきたかというところですよね。


青木:

よくカメラが回っていないところで中島さんとよくお話をするんだけど、今の政治家と、角栄さんにしても福田さんにしてもいわゆる昔の政治家、なにが一番違うかって、その一番違うところは。


中島:

国家観があるかどうか。日本をどういう国にしていきたいかという一番大きなところですよ。「こんな国に日本をするんだ」というその結末があって、だったらこうしていかなきゃいけないという。

今の政治を見ていると「ここがあれだから絆創膏を貼って」「ここがちょっとこうだから絆創膏を貼って」と。それだと国民にわかりにくいと思うんですよ、頑張りようも俺たちもあんまりないというか。


青木:

2年前にお話した福田さんにしても田中角栄さんにしても、彼らにとっての政治というのは手段なんです。おっしゃったようにどういう国づくりをするのか、どういう国づくりをして国民の皆さんに幸せになってほしいのか、そのための手段として彼らは政治をやって政治家になったわけです。ところが大変失礼だけども今の政治家の皆さんって、政治家に当選した段階で上がりという、そんな気がしてしょうがないんですよね。


中島:

よく言われることですけれども、これはご自身たちがどう思ってらっしゃるかはわかりませんが、政治家になること、それから政治家であり続けることが一番の仕事になっちゃってるというふうに評価する人が多いんですよね。だってそうしか見えないという、そうしか見えないということは、その人たちの仕事がそうなっちゃっているんでしょう。


青木:

そういう中でさっき言ったように角栄さんと福田赳夫さんというのはある意味同じ自民党の政治家でありながら別々の方法で、まったく違う方法で国家観を提案して、国民の幸せを彼らなりに実現しようとしていった。非常にこういう言い方をすると不謹慎かもしれないけど勉強していておもしろかったです。


中島:

今回田中角栄さんをやるというので先生もかなり読み込んで、この収益はほとんどないんですけど、その収益以上分の本を買ってらっしゃるので。


青木:

本を買って勉強するのはしょうないです、僕らは。


中島:

先生の趣味みたいなものですからね。


青木:

そうですね。角栄さんの人生を振り返りながら彼がやってきた政策、あるいはやれなかったこと、そういったことを皆さんと考えていきたい。

まず有名な話ですけど、お生まれは新潟県です。新潟県の当時の地名でいうと刈羽郡二田村坂田、現在の原発が柏崎市。お生まれになったのが1918年だから第一次世界大戦が終わった年ですね。1918年5月4日、元号でいうと大正7年。お父さんは牛や馬の商人、牛馬商人。昔、馬喰という言葉がありましたよね、家畜を売買する。

ただかなり博打打ち的な性格があったみたいで、たとえば確実に儲けになる牛や馬の売買をするんじゃなくて、たとえば今から日本は牛肉が必要になるというので、オランダから当時日本になかった乳牛を買いつける。ただ、乳牛1頭がめちゃくちゃ高くて家1軒ぐらいしたらしいんですよ。それを借金して3頭オランダから持ってこようとした。そのうちの2頭があまりの長旅で死んじゃうとかね。そういうお父さんの姿勢もあってお家は常に貧乏だった。なおかつ貧乏子だくさんで、角栄さんを含めて8人兄弟。6人が女性で、角栄さんともう1人お兄さんがおられたんだけども、お兄さんは生まれてすぐ亡くなられたらしいんですよ。7人兄弟の中で角栄さんだけが男の子だったということらしいんです。

ちなみに1918年、同い年の生まれが中曽根康弘さん。同い年です。ただ中曽根さんは角栄さんと全然違う群馬の高崎市の大金持ちの材木商の息子さんで、これもこういう言い方をすると中曽根さん怒るかもしれんけど、何不自由なく青春を謳歌し、勉強も一生懸命やって、一高東大とエリートコースを歩んだ人だったんです。そういう意味でも中曽根さんと角栄さんは非常に対象的な人生という。


中島:

ただ僕からすると、僕が一番最初に総理大臣で覚えたのが角栄さんだったんです。「まあこのー」という。それが小学校2年生とか3年生ぐらいなんですよ。


青木:

角さんが総理大臣だったのは1972年でしょ、54歳ですよ。今何歳だっけ。


中島:

今58です。


青木:

考えたら若いですよね。


中島:

それはみずみずしい。そのあと権力を失って、80年代半ばに中曽根さんが総理大臣になるので、僕のイメージとしては中曽根さんのほうがずいぶんと若いというイメージだったんです。


青木:

実は同い年なんです。さっき言ったように家が貧乏だったので、学歴はいわゆる義務教育だけと。


中島:

小卒と言ってましたよね。


青木:

正確に言うと二田尋常小学校に入学して、高等科2年、だから高等小学校は一応行ってるんですよ。高等小学校って今の我々の感覚でいうと中学校1、2年生。本人は勉強をしたかったらしいんです。ちなみに成績は良かったと。これは間違いない事実で。


中島:

それはこの人の頭の中はコンピューターと。


青木:

コンピューターと言われた。特に一番得意だったのは算数。国語もすごく好きで文学少年だったと。


中島:

言っていることとかやったことを考えたら相当な頭の良さでしょうね。


青木:

ただ残念ながら貧乏だったので今で言うと14歳で高等小学校を卒業して、当時大恐慌が世界中に広まって日本も不況だったんですよ。政府が貧しい農村の人たちを救うというので、言うなれば公共事業を起こすんです。その建設作業の現場、土木建築の作業現場に14歳の田中角栄少年は行くわけです。そのときの原体験というのが彼の人生を決定すると。


中島:

そりゃそうですよね。


青木:

そこで2つ学ぶんです。1つはどれだけそこで頑張っても生活が豊かにならない。お国は確かに自分たちに仕事を与えてくれるけども、めちゃくちゃきつかったらしいんですよ。ところがもらう給料はほんのスズメの涙。ただそこで1人の角栄さんが言うおもしろいおじさんに出会ったと。おもしろいおじさん、年の頃なら40か50ぐらいですよね。名前も知らない。ただその人は楽しそうに土木建築の仕事をしていると。あるとき聞いたらしいんですよ、「なんでそんな楽しくやってるの?」って。「だって俺たちがいないとこの国ってできあがらないんだろ」当時の言葉で土方という言葉があって、土木建築の作業員の人たち。「俺たち土方がいなかったらこの国だって地球だってできないんだぜ。俺たちはある意味地球のデザイナーだぜ」と言ったと。それが強烈に頭にあって、そういう仕事ってやっぱりおもしろいんだなと思ったらしいんですよ。

これが政治家・田中角栄プラス、土建業界の一員である田中角栄の1つの原点になっていったということらしいんです。

彼はある意味家計を支えるためにこのあと故郷から東京に行くわけですよ。そこでまた波乱万丈の人生が待っていると。


中島:

それは次にしましょうかね。



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