世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの「青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。
(前回の記事 朝鮮の歴史(1)中国王朝の支配~高麗はこちら)
動画版:朝鮮の歴史(2)高麗と李朝朝鮮国
中島:
歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして世界史の青木先生です。よろしくお願いします。
青木:
お願いします。
中島:
朝鮮半島というところで歴史を見ていっていて、高麗のあたりで、そこからまた新しい国家ができて。
青木:
高麗もいろいろ大変な国で、ちょうど唐が滅亡して東アジアが大混乱になる、そのあたりで
できる国なんです。モンゴル高原には遼なんていうモンゴル人の強い遊牧国家もできるし、いろいろ東アジアが激動する時代だったんですけども、13世紀には日本と同じようにモンゴル人の侵略を受けてほぼ制圧されちゃうんです。
ただモンゴルは高麗を滅亡はさせなかった。なぜかというと高麗には非常に強力な水軍、海軍があって、これは陸上では最強であったモンゴル人にとって利用できるんじゃないかと。みたいなところもあって服属させるにとどめたんです。その高麗軍なんかを利用しながら元寇なんかもやるわけです。
一方14世紀ぐらいになると高麗が支配している朝鮮半島の海岸地帯を倭寇という日本人を中心とする密貿易者、教科書によっては海賊。実際に国家の目を盗んで貿易をやり、それが思いにまkせないと略奪をやったり。これは当時の絵なんですけど、武装して海岸地帯の村に押し入って、物だけじゃなくて人さらいまでやってしまうと。これで朝鮮半島を支配している高麗はかなり混乱をするわけです。
中島:
これって船の技術が上がったということですか?
青木:
あるでしょうね、それは。
中島:
だって北欧のほうでも海賊ってそのあたりでしょ?
青木:
あっちはバイキングと言われる連中で、確かにそうですね、そんなにでかい船じゃないんですけどね。しかも喫水が浅いので川を遡っていけるんですよね。倭寇たちが使っていた船は外洋船なのでちょっと違うんですけどね。
とにかくそれで朝鮮半島は大混乱に陥る。その倭寇をやっつけることで民衆の支持を受けた
人が新しい朝鮮半島のリーダーになるわけです。これが李朝朝鮮国というやつで。
中島:
今の韓国の祖みたいなところですか?
青木:
そうですね。僕らは朝鮮という言い方をする。朝鮮という名前が国名になったのはこのときが最初なんですよ。1392年なので日本だったら室町時代が始まってしばらくしてぐらいですね。それこそ足利義満がいるぐらいか。それぐらいに李朝朝鮮国、王朝は李一族が支配したので李朝、国名は朝鮮。
それまでの朝鮮の歴史でなんとか朝鮮という国はあるんだけど、これは歴史学者が勝手つけた名前なんですよね。朝日のように鮮やかな国でありたいというので朝鮮という名前になるわけです。
一方で国際関係なんですが、李朝朝鮮ができるちょっと前に元が滅んで、中国を支配していたモンゴル人はモンゴル高原に追い払われてしまう。中国に百数十年ぶりに中国人の王朝が生まれるわけですね、これが明。その明との友好関係の中で李朝朝鮮は国づくりをしていくわけですね。
いろんなもの明から学ぶんだけども、決定的だったのは朱子学という儒学の一般、これを国家の基本的なイデオロギーにしていくわけです。
中島:
今もどっちかというとそのきらいがありますよね。
青木:
儒学の中でも朱子学って非常に壮大な体系で、世界史の教科書レベルでいうと、ひとつには大義名分というのを非常に大事にする。名分とはなにかというと名前の分と書くんですけど
も、分は社会的なポジションを意味するんです。社会にいろんなポジションがある。そのポジションに応じた義務と責任、これを大義というんです。
たとえば家庭にあっては父、母、子ども。子どもには子どもの義務と責任があり、親には親の義務と責任があると。国家でいうと国王皇帝には支配者としての義務と責任があると、家臣はそれを支えるという義務と責任がある。そういうものをちゃんとやっていかないと国は、あるいは社会は世界は乱れますよと。このへんを非常に強調するのが朱子学なんですね。
中島:
いまだに韓国の人たちは先輩の前で飲まないという。だからちょっと隠して飲むという、お酒を。そういうのが脈々といまだに続いていますよね。
青木:
長幼の序とかね。男女関係も非常に厳しいんですよね。
中島:
今のワールドスタンダードでいうとそこのところはどうなの?という、いわゆる男尊女卑みたいなところがあるのでね。
青木:
ひとつおもしろいなと思うのは朝鮮の最大の一番有名な工芸品といったら磁器なんです。これは高麗の時代から有名だったんですよ。高麗の時代には磁器でも、これはカラーじゃなく
て恐縮なんだけども、青緑の磁器です、青磁というやつね。
中島:
ちょっと緑がかったやつですね。
青木:
高麗青磁といって。
中島:
これは教科書によく載っていましたよね。
青木:
そうそう。これがヨーロッパなんかにも輸出されるわけです。ヨーロッパの連中はアジアから送られてきた青磁を見て朝鮮の存在を知る。当時の朝鮮の名前が高麗でしょ。朝鮮語で言うとコリョ。これがなまったのがコリアなんです。
中島:
そういうことなんですか。
青木:
韓国のことを英語表記でコリアというけど、語源になったのは高麗なんです。それもこれを通じて国を知ったからなんです。これに対して李朝朝鮮国の時代の磁器というのは色が白なんです、白磁。これは朱子学の影響なんです。
中島:
その朱子学の影響ってなんですか?
青木:
朱子学というのは純粋な理性、人間の持っている理性に応じて物事を考えていこうと。純粋なものを求めるというのが学問としてあるんです。
中島:
だから色も白ということになるんですか?
青木:
思うのは、今の韓国のKポップスターたち、色が白いでしょ。そこが根本にあるんじゃないかなといつも。
中島:
僕が思うのは白という色が当時どれぐらいあったのかなと思って。今は作り出せると思うんですけど、純粋な白なんてなかなか自然界ではないじゃないですか。
青木:
確かに純粋な白はなかったと思うんですけど、当時は木綿の織り物がもう流行っているので、基本的にそれに染色をしない。庶民も結構白い服を着ていますよね。汚れが目立つと思うんだけど、韓国の歴史ドラマなんかを見てると庶民が着てるのってだいたい白いですよね。インテリはインテリで純粋な
中島:
白を。
青木:
そうそう、それを重んじると。一方で李朝朝鮮の時代にひとつ大きな発明がなされる。それが韓国の文字ですね。
中島:
ハングル文字ですね。結局そこから漢字を使わない?
青木:
それが違うんですよ。ハングル、簡単に言っちゃうと日本でいうなら仮名に当たるものなんです。
中島:
平仮名ですよね。
青木:
そう、平仮名とか片仮名に当たるもので、いわゆる表音文字なんです。それを作ろうと思ったのが当時の李朝朝鮮国の国王だった世宗という国王で、たぶん李朝の歴代国王の中で一番尊敬されていると思いますね。世宗大学というのもあるし、世宗博物館というのがソウルにあって、めちゃくちゃでかい博物館があるんですよね。ある意味韓国の文化伝統の基礎を築いた1人。なんで彼がハングル、正確には訓民正音というんですけども、作ったかというと、漢字はぶっちゃけ難しいと。じゃあ民はなかなか漢字を勉強する時間がないので、民でもわかるように、訓民正音の民は民なんです。民にもわかるような文字を作ってやろうと。ただそれでも勉強する時間は少ないから忘れちゃうよね、じゃあどうすれば思い出しやすいか。発音したときのベロの形。
中島:
表音というのは発音したときのベロの形ですか。
青木:
それに近づければ思い出しやすいんじゃないかみたいな発想もあったらしいんですよ。かなり工夫して48文字だったかな。確か50前後だったと思うんですけども、これを作るんです。さっき漢字はどうなるかという話があったけど、漢字はインテリゲンチャたちの間では相変わらず使われ続けるんです。表音文字でしょ、場所を取るんですよ。
中島:
今でも地下鉄の駅とかは漢字を使ってますもんね。
青木:
そうそう。北朝鮮は漢字を完全に一掃して、いわゆるハングルだけにしたんです。だけど韓国のほうは併用してますよね。我々と一緒ですよ。
中島:
ただ普段使ってるのかなと思ったら使ってはないだろうなという。ほぼ見ることはないですもんね。
青木:
標識なんかたぶんそうですよ、こっちですよね。
中島:
そうですね。
青木:
その李朝朝鮮に16世紀の末に日本が侵略をしていくわけです。いわゆる豊臣秀吉の朝鮮出兵というやつですね。
中島:
そこは次回にしましょうか。朝鮮半島の歴史です。
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