偏見と悪意で歴史トーク。誰も得しない日本史です。
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。
(現代語:川の流れは途絶えないが、そこを流れる水はもとの水ではない。よどんだところに浮かんでいる泡は、一方では消えてなくなり、一方では現れて、長い間そこにあることはない。世の中の人や住居もまた、このようなものである。)
鎌倉時代の随筆、『方丈記』の書き出しです。世の無常を言い表した名文ですね。
作者は鴨長明(かもの ちょうめい)。鎌倉時代始めのころの人です。
信念(Faith)
浮き世に絶対などというものは
無く、理不尽な思いを胸にして
途方にくれる時もある。
それを乗り越える為には、確固
たる信念と洞察、そして幾分か
の行動力を持つ必要がある。
↓「浮き世」については
There is no "absolute"
in this mundanity.
Occasionally you get lost
facing unreasonable burdens.
In order to overcome,
you need a firm conviction,
penetration, and the ability
to take action.
鴨長明は1155年に生まれました。保元の乱の前の年です。ということは、11歳のとき(1167年)に武士の平清盛が太政大臣になってますので、10代と20代の多感なころに平家の全盛期を目のあたりにしたことになります。あの「平家にあらずんば人にあらず」の、平家全盛期です。そして、30歳のとき(1185年)に、その平氏が壇ノ浦の戦いであっという間に滅亡するのを見たんです。
今なら、自分が中学生になる少し前に、アフリカのガーナとかが、いきなりアメリカもイギリスもフランスもロシアも中国もぶっ倒して国連の常任理事国のリーダーになって、世界の金銀財宝の半分とかゲットしたけど、
30歳くらいのときにはもう、コートジボワールとかに滅ぼされたようなもんです。このような出来事が、どれだけ当時のみんなにショックを与えたのかは、想像を遥かに超える戸思います。
There is no "absolute" in this mundanity......
(浮き世に絶対などというものは無く……)
鴨長明は賀茂御祖神社の禰宜(ねぎ)の次男です。
禰宜というのは、神社のエラい人です。あと、賀茂御祖神社も超メジャー神社です。
この鴨長明、まずは禰宜の後継争いに敗北します。
ネギとな!?
(↑10年以上ぶりに思い出しました)
その鴨長明、今度は河合社(ただすのやしろ)の、禰宜ポジション争いに参戦します。が、あの後鳥羽上皇の推薦状までゲットしたにもかかわらず、敗北します。
ちなみに、この河合神社、鴨長明を拒絶したにもかかわらず、今では「鴨長明ゆかりの神社」というキャッチコピーで売り出しています。私を落とした大学とか企業とかが、「のぶたゆかりの大学/企業」とかいって、寄付を募ったり、のぶた関連製品とかでボロ儲けしてたら、マジギレすると思うんですけど。
Occasionally you get lost facing unreasonable burdens......
(理不尽な思いを胸にして 途方にくれる時もある……)
さて、ここまで神社のポジション争い2連敗の鴨長明です。さあ、これからどうするのか??
あの鴨長明、なんと出家しやがります。出家ですよ!!神社の神官のムスコなのに、魂を!アツい神社ソウルを仏教にあけ渡したんです。
「アーメン」とか言ってた牧師が、出世できなかったからといって、次の日からターバン巻いて「インシャラー(イスラム教で、アラーをたたえる言葉)」とか言いだしてるようなもんです。
格ゲーでいうなら、1ラウンド目をとられた吹き荒ぶ風のゲーニッツ(Goenitz of the Windly-Blowing Wind)が、2ラウンド目から逆巻く風のラシード(Rashid of the Turbulent Wind)に変身するようなもんです。……あれ?2人とも風系だ。意外といけるかも。「ふたりはカゼキュア」とか結成するのもワルくないですね。
↓ゲーニッツについては
In order to overcome, you need a firm conviction, penetration, and the ability to take action......
(それを乗り越える為には、確固たる信念と洞察、そして幾分かの行動力を持つ必要がある……)
神社からお寺にチェンジする、鴨長明の「幾分かの行動力」は認めましょう。だが、「確固たる信念と洞察」は大丈夫か!?
どの鴨長明かは知りませんが、行動力をもって華麗に転身したこの男、しょうこりもなく今度は、あろうことか日本の暴力集団の総元締めである鎌倉幕府の、3代将軍実朝に「おれをおまえの和歌の師匠にしろ!」ともちかけます。
T...the ability to take action......
(い、幾分かの行動力・・・)
行動力があるのは、よーく分かりましたが、もちろん、将軍からは断られます。日連みたいなめにあわなかっただけでも、ラッキーだったんじゃないでしょうか。
こうして、世の中で成功しなかった鴨長明は、社会に背を向けて、世の中をナナメにみたエッセーを書くことになるのです。そのエッセーは、何百年経っても色あせず評価されているので、洞察力はあったということでしょうか。
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