かつて、お釈迦さまは言いました、「厳しい修行をして、悟りを開くのです。」
ところが、お釈迦様が言うことは難易度が高すぎて、誰も実行できません。誰も修行を実行できないというお通夜ムードが広がると、誰も宗教に入信してくれなくなってしまいます。
こうした理由があるから、宗教家は悟りを開いたり、天国に行ったりする条件、いわばハードルを下げていく傾向にあります。世界的な傾向です。「自分にもできそう」と、みんなに思わせることが大事なんです。「飲むだけで10キログラム減量できるの錠剤」とか「もってるだけで開運成就の石」とか。
日本の仏教界も例外ではなく、時代が新しくなるにつれて、宗教家は修行や悟りのハードルを下げていきました。
そして鎌倉時代のこと。その究極である一遍は言いました。
「仏を信じる信じない、行いの浄不浄に関係なく、人々は阿弥陀如来によってすでに救われているのです。」
人々は思いました。「えっ!?自分が極楽に行けるって、もう生まれたときから決まってるの? 修行しなくていいの? 好きなことだけやってていいの?」
一遍は言いました。「さあ、この喜びを表現するのです。」
するとどうでしょう。皆の極楽往生が確定されているという喜びが人々の心を高揚させて、「なむあみだぶつ」と唱えながら踊り始めたではありませんか。
これこそが、教科書に名高い時宗の踊念仏(おどりねんぶつ)なのです。
「一遍が弟子たちと鉦(かね)を打ち、床を踏みながら踊っている」(山川出版社『詳説日本史』)絵は必ず教科書にあります。「一遍上人絵伝」で画像検索して、一遍のエクスタシーな表情をチェックしておきましょう。
《英訳してみよう》
一遍とオーディエンスは、ふしぎなおどりを踊りながら「ううまま うままう うまう うままう」の呪文を詠唱した。
《英語訳》
Ippen and his audience chanted "U-U-MA-MA U-MA-MA-U U-MA-U U-MA-MA-U", dancing an odddance.
平成元年の冬、「グラディウスⅠⅠⅠ ー伝説から神話へー」というシューティングゲームが稼動しました。グラディウスⅠⅠの成功を受け、読者からアイディアをつのって登場したグラ3でしたが、まあ難しい。そんなゲキムズのグラ3の前半の山場が、ステージ3のボス「ビッグコア マーク3」でした。その反射レーザーは早くて避けにくく、当たり判定のデカさもあって、プレイヤーの心をズタズタにしたものでした。しかし! そんなプレイヤーの救世主となったのが、当時唯一のアーケードゲーム専用雑誌『ゲーメスト』、略して「メスト」の攻略記事でした。
メストは言いました。「「ううまま うままう うまう うままう」と詠唱しながら逃げるのです。」
そう、ビッグコアマーク3の反射レーザーには、一定のパターンがあったのです。
反射レーザーを避けるときに自機を合わせる場所は、なんと二箇所だけ。後ろ(う)か前(ま)です。これが一定の順序で放たれていたのです。
なんと! このパターンさえ覚えれば、我々は生まれながらにしてステージ3をクリアできることが決定しているも同然ではないか!!
こうして、全国のプレイヤーは米酢斗如来(めすとにょらい)によって救済され、全国のゲーセンでは、プレイヤーとギャラリーによる「ううまま うまままう うまう うままう」の大合唱が絶えるこがなくなったのでした。めでたしめでたし。
⇩反射レーザーを避けるときの、自機の前後の動きに注目。動画では最初の「ううまま」の「まま」で前に出ずに、もう一段階後方のポジションに移っています。その後は、呪文通りです。最後に自機をつぶしてますが、このときに画面の一番下にいって少し待てば、ボスのほうが自爆してクリアできます。
バルサミコ酢のアレ(うっうっーうまうま)とは一切関係がありませんので、間違えないようにしてください。試験に出ますよ。
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